3Dスキャンスタジオ運営コラム【3Dスキャンって何!?編】
2023.06.14
newtrace株式会社の萩原です!
この記事は3Dスキャンスタジオの運営スタッフが、基本知識から応用(という名の遊び)について書きました!これを読んでいただけると3Dスキャンでできる事の可能性やビジネス?やエンタメでの活用が見えてくる内容です。続きの内容もあわせてご覧ください!
3Dスキャンってご存じでしょうか?
スキャンというと2次元のバーコードを読み込んだり、文書をコピーすることに使ったり…、そんなイメージを持つ方は多いと思います。
家庭用スキャナーが普及しだしたころを覚えている昭和世代の筆者には、当時は、便利な世の中になったものだと感慨深かった思い出があります。
▲レーザーってこんな感じですよね!
そんな時代の変化も今や昔、近年では高精細なスキャンは当たり前。テキストデータを読み込んだり、QRコードからお目当ての商品情報をゲットしたり、その進化はとどまることを知りません。
なんでもコピーすることが当たり前の世の中ですから、とっても便利な技術ですよね。
▲テキストスキャンイメージ
でも、皆さんお気づきでしょうか。このスキャン技術、2次元のものを2次元に出力するだけだったんです。
3次元の立体物を3次元に出力(表現)することが出来たら…。
▲3D出力イメージ
CG制作のみならず、世の中にも大きな変化をもたらすかもしれないこの技術を、今回は5回にわたってわかりやすく紹介していきたいと思います。
CG制作に興味のある方はもちろん、メタバースやデジタルツインなど、用語は知っているけど現場で何が起こっているのかはよくわからない、といった方にも丁寧に説明していきますので必見の内容です!
▼目次
1.CG制作は職人の世界!?
2.3Dスキャンの仕組み
3.職人と最先端のハイブリッド
1. CG制作は職人の世界!?
CG制作というと、何か最先端の技術が使われていて、中では自動化されたプログラムが働いていて…なんて想像をする方も多いのではないでしょうか。
でも、実際の制作作業ってもっと地味で時間のかかるものなんです。
現実の椅子1個をCG化するとき、CGクリエイターたちは、まずは現実の設計図面を眺めながら、ねじがどこで留められていて、背もたれがどこで支えられていて…なんてことをあーでもないこーでもないと一生懸命考えます。
▲CGクリエイターの作業の再現力には努力あり
そうやってようやく構造を理解したら、立方体を立ち上げて徐々にパーツの形に成形し、積み木のように組み上げて…なんて作業を4時間、5時間…長くなると1日中ぶっ通しでパソコン画面を凝視しながら集中して作り上げていくものなんです。
それもそのはず、現実の椅子は、背もたれの角度からひじ掛けの曲線、こだわりのオーダーメイドでしたらねじ一つに至るまで全部異なりますから。すべてを完全再現するには経験豊富なCGクリエイターの「目」がとっても重要なんです。
同じことが人のCG制作にも言えます。
目や鼻の位置、顔の輪郭から体形、細かいことを言ったらシミやそばかすの位置まで、すべて異なるのですから、これを完全再現しようと思ったら、、気の遠くなる作業です。
2. 3Dスキャンの仕組み
そこで、3Dスキャンの出番というわけです!
その仕組みをごく簡単に説明しますね。
2次元の文書をスキャンする場合には撮影機材と文書の距離は一定ですから、色の情報が取得できれば事足ります。
▲通常の撮影のイメージ
対して、3次元の物の場合、裏側や横、上下がどうなっているのかを知りたいのですから、360度全方向にカメラが必要。さらに、物と対象の距離は場所によってすべて異なりますから同時に奥行の情報を取得する必要があります。
▲3Dスキャンの撮影のイメージ
そうやって取得した情報(色と位置の情報。点群なんて言います。)をパソコンの3次元空間上に並べていくと…3Dスキャンの出来上がりというわけです。
▲点群イメージ
▲撮影画像と作成モデルの位置関係
実際には上述のような撮影画像を基にして点群作成を行うフォトグラメトリとレーザーを照射して物と機材の距離を正確に測ってかたちのスキャンのみを行うレーザースキャンという2つの技術(もしくはその組み合わせ)があります。
ここでは初級編を目的としていますので、よりイメージがしやすく一般にも普及し始めているフォトグラメトリを対象として説明していきます。
ただ、この夢のような技術、弱点もあります。
透明なものはカメラに映りませんから3D化に不向きです。逆にミラーのような素材や、陰影のない単色のものも表面の形状がつかめませんから3D化が難しかったりします。
3. 職人と最先端のハイブリッド
前述の弱点を補完するためにどうするのか、鍵はやはり人の「目」だと考えています。
3Dスキャンができない部分についてはCGクリエイターが「補完」作業を行います。
カメラに映り切らなかった部分を加えたいとき、実際の被写体よりデータ上ではもっときれいに見せたいとき、CGを知り尽くした職人の手作業が不可欠なのです。
スキャン後のデータの出来の良し悪しを最終的に評価するのが人間である以上、どんなに技術が発展してもこのプロセスは避けて通ることができないのかも…そんな哲学的ことを考えているうちに今回は稿が尽きてしまいました。
次回以降、実際のスキャン作業の様子や、実務での制作事例も交えて、なぜ、職人とのハイブリッドが重要なのか、3Dスキャンがどう世の中を変えていくのか、出来る限りわかりやすく解説していきますのでお楽しみに!
3Dスキャンスタジオを絶賛運営中!
東京都渋谷の道玄坂上に3Dスキャンスタジオを運営しております。
スタジオ撮影にかかわらず、3Dにまつわるご相談事などは是非お気軽にお尋ねくださいませ。
モデリングディレクター 萩原
学生時代は建築と哲学について学び、設計事務所での実務経験ののち現スペースラボ/newtrace株式会社に入社。建築CGパースの制作を出発点としながらも、フィリピンでの業務管理や添景素材販売、3Dスキャンスタジオの設計、情シス管理など紆余曲折を経て現在入社8年目になります。「CGが社会に対してできること」に取り組んでいます。