メタバースの市場規模は?発展する理由、活用事例、ビジネスモデル、今後の課題を解説!

2024.02.22

メタバースの市場規模は?アイキャッチ

Facebook社の社名変更からの盛り上がりも落ち着いてきた感のあるメタバース。新規参入のみならずリピート企業が増えてきた一方、改めてこんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?

 

「メタバースは社会や企業にとっての意義があるのだろうか?」

「メタバースは今後どうなっていくのか?」

「メタバースの参入価値はあるのだろうか?」

 

そこで、今回はメタバースの市場規模、発展が期待される背景や見通し、また市場拡大していく上での課題について、初心者の方にも分かりやすく解説します。


▼目次

1.メタバースとは

2.メタバースの市場規模

3.メタバース市場の発展が見込まれる背景

①ムーンショット目標

②VR技術の進化・普及

③NFTの進化

④コロナ禍によるオンラインコミュニケーション需要

⑤若年層へのゲーム型メタバースの普及

4.メタバース市場で進行中の取り組み事例

①日本の取り組み

知的財産推進計画2022 ー内閣府、知的財産戦略推進事務局ー

Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会 ー総務省ー

Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業 ー経済産業省ー 

②世界の取り組み

5.メタバース市場において多くの企業参入実績がある、もしくは期待されるビジネス分野・領域

①EC

②広告、PRイベント

③ファンイベント

④観光

⑤教育

⑥不動産

⑦医療

⑧バーチャルオフィス

6.メタバースの普及で生まれるビジネスモデル

①デジタルコンテンツ・サービスの販売

②インフラやツールの企画・制作・運営

③プラットフォーム手数料

④マーケティングや販売への活用

⑤広告枠販売

⑥各種業務効率化への活用

7.メタバース市場拡大に向けた今後の課題

①デバイス性能やインターフェイスの改善と低価格化

②仕様の標準化

③マネタイズ

④人材の確保

⑤メタバースやNFTに関する法整備(プライバシーとセキュリティのリスク)

まとめ


1.メタバースとは

「メタバース」は、もともと米国のSF作家Neal Stephensonの小説『スノウ・クラッシュ』(1992年)に登場する、インターネット上の仮想世界を指す言葉でした。現在では一般的に「仮想空間を用いたサービスの総称」のことを指し、明確な定義はなく様々な種類のものがあります。

メタバースは「アバター」と呼ばれる自分の分身を用いて仮想空間内を自由に移動し、アバターを通じて様々な人と自由に交流できるのが大きな特徴です。

例えば他のユーザーとチャットを通じてコミュニケーションを取ったり、一緒に協力しながら仮想世界を創造(共創)したり、現実世界のようなイベントを楽しんだりできます。

2.メタバースの市場規模

メタバース市場予測グラフ
出典:総務省「情報通信白書令和4年版」

総務省「情報通信白書令和4年版」の「世界のメタバース市場規模(売上高)の推移及び予測」によると、メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されています。

ディアやエンターテインメントだけではなく、教育、小売りなど様々な領域での活用が期待されています。

3.メタバース市場の発展が見込まれる理由

①ムーンショット目標

ムーンショット目標とは、内閣府が2050年までに身体や脳、空間や時間といったさまざまな制約から人々が解放された社会を実現するために掲げている壮大な計画のことです。

少子高齢化や価値観の多様化などを背景に多様なライフスタイルを追求できる持続可能な社会に向けて、空間と時間の制約を超え、企業と労働者をつなぐ新しい産業を創出することや、サイバネティック・アバターの活用によってネットワークを介した国際的なコラボレーションを可能にするためのプラットフォームを開発し新しいビジネスの実現を目指しています。 

このプラットフォームを実現する技術として、AIやロボットといった最新テクノロジーと共に大きな一端を担うのがメタバースと言われています。

ムーンショット目標 イメージ
出典:内閣府ホームページ

②VR技術の進化・普及

VRは仮想現実などと呼ばれ、仮想空間の中で現実かのような疑似体験をすることが可能となる仕組みのことを指します。つまり、仮想空間で活動するメタバースにおいても欠かせないのがVR技術です。

このVR技術として代表的なのが、VRゴーグルやヘッドマウントディスプレイです。メタバースはPCのモニターやスマートフォンからも体験できますが、これらを装着することでより没入感を得ることができます。

ヘッドマウントディスプレイの進化は進んでおり、たとえばMeta社の「Meta Quest Pro」は、装着した人の目の動きや表情をセンサーで感知し、アバターに実際の顔の表情を反映できる機能などを備えています。

また、総務省「令和4年版情報通信白書」によると、VR機器の出荷台数は2021年に1,250万台を突破し今後も増加が予想されています。

VR機器の出荷台数推移グラフ
出典:「令和4年版情報通信白書」(総務省)

これらVR技術の進化や普及に加えてインターネット回線の高速化などもあり、メタバース市場の発展が後押しされることでしょう。

③NFTの進化

NFT(Non Fungible Token/非代替性トークン)とは、簡単に説明すると「代えの利かない“本物”である証明書付きのデジタルデータ」のことです。

 

このNFTが実用化されることによって、メタバース内で流通する通貨が、複製ではない本物であると保証され、メタバース内に信頼性の高い「経済圏」が形成できるようになったのです。

またNFTによって本物が保証できるようになったことで、メタバース内でアバターが身につけるアイテム、メタバース内のワールドや建物といった不動産などにもオリジナルの価値が生まれます。

そのため多くの企業が、メタバースでのビジネス参入を検討しており、市場の発展に繋がることが見込まれます。

④コロナ禍によるオンラインコミュニケーション需要

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人々のコミュニケーションが対面からリモートに移行する中、ビジネスシーンにおいてはバーチャルオフィス、バーチャル展示会などを導入する企業が増えています。

また、デジタルコミュニケーションに対する人々の抵抗感が少なくなり、比較的気軽に利用できる心理状況になったのがメタバースの普及に追い風になっていると言えます。

⑤若年層へのゲーム型メタバースの普及

ゲーム型メタバースとは、チャット等のコミュニケーション機能のついたオンラインゲームのことです。子供のころからスマホやタブレットを操作し、オンラインコミュニケーションが当たり前のZ世代・α世代は、オンラインゲームのコミュニケーション機能をSNS代わりにして友人たちとゆるく繋がる文化を形成しています。日本では「あつまれ どうぶつの森」が、コロナ禍で友人との繋がりを求める若者の間で大ヒットしました。

ほかにゲーム型メタバースの代表的なサービスとしては、Fortnite(フォートナイト)やRoblox(ロブロックス)があり、それぞれ若年層を中心に数億人規模のユーザー数を誇ります。

このように若年層にゲーム型メタバースが普及していることは、メタバース市場の発展に大きく寄与していくと考えられます。

既にFortniteやRobloxではユーザーがオリジナルのワールドやアバター、アイテムなどを作成できる特徴を活かし、企業が自社ワールドを作り消費者とのコミュニケーションに活用するなど、若年層の取り込みを狙ったビジネス用途の進出も進んでいます。

4.メタバース市場で進行中の取り組み事例

①日本の取り組み

日本では、メタバースの活用に向けて官・民ともに多角的に取り組んでいます。

政府は、メタバースを推進する上で必要な環境・法の整備などを目指して、以下のような計画や事業をスタートさせています。

知的財産推進計画2022 ー内閣府、知的財産戦略推進事務局ー

「デジタル時代のコンテンツ戦略」として、以下の施策を提唱しています。

 

●デジタル時代に対応した著作権制度・関連政策の改革

●メタバース上のコンテンツ等をめぐる法的課題の把握と論点整理および官民一体となったルール整備

●NFTの活用に関わるコンテンツホルダーの権利保護、利用者保護

●国内向け作品づくりから「世界で売れる」作品づくりへ

 ・制作システムの抜本的転換と国際販売力の強化

・クリエーター等主導への転換を踏まえた人材育成 など

Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会 ー総務省ー

メタバース等の仮想空間の利活用に関して、利用者利便の向上とその適切かつ円滑な提供及びイノベーションの創出に向け、有識者による研究会を開催しています。

 

<研究事項>
(1)メタバース等の利活用における利用者利便の向上に関連する事項
(2)メタバース等のユースケース毎の利活用における課題整理に関連する事項
(3)メタバース等の利活用拡大が、デジタルインフラ、社会経済活動、利用者等へ与える影響
(4)(1)から(3)に掲げる事項のほか、新たな時代のメタバース等の利活用に関連する事項

Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業 ー経済産業省ー

主にクリエイターの観点から、Web3.0やメタバース空間における法的論点の調査・整理、海外事例の調査、研究会による議論などの論点整理を行っています。

 

また、民間では、多くの企業がメタバース市場に参入しています。

 

▼関連リンク:日本企業のメタバース事例(サイト内リンク)

日本企業がメタバースに取り組む意味は?日本のメタバース事例とメタバース制作会社やプラットフォームを紹介

②世界の取り組み

総務省がまとめた「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会(第7回)」資料によると、各国が課題やリスクに対して、あらかじめ整理・対応しておきたいという意図があることが伺えます。

メタバースがその良さを活かしながら発展するためには、各国の積極的な取り組みに加えて、国を超えて連携し、法や環境を標準化していくことが求められます。

 

▼関連リンク:総務省「メタバース等の利活用に係る海外動向等(諸外国・国際機関・標準化団体の動向)」

5.メタバース市場において多くの企業参入実績がある、もしくは期待されるビジネス分野・領域

メタバース市場は今のところ需要の掘り起こしが始まったばかりのブルーオーシャンであるといえます。

ビジネスにおいてもさまざまな分野での参入が試されていますが、既存のリアル施策が全てメタバースに取って代わるのではなく、現実世界での施策とメタバースを絡めながら、あるいは現実世界の施策への誘導としてメタバースを使うなど、リアルとバーチャルの2軸で展開して成果を上げる場合が多いようです。

では、どのような分野・領域でメタバースの活用が期待されるのか見ていきましょう。

①EC

小売業界では新型コロナ以降、リアル店舗や既存のECサイトに加えてバーチャルストアを開設し、リアルとバーチャルを絡めて販売展開する例が増えました。

これまでのネットショッピングと違う点は、実際の店舗を再現した空間をアバターで訪問し、360度あらゆる角度から商品を眺めたり、使用イメージを動画で確認できたりと臨場感を持ってショッピングができることです。

ストア内で友人と待ち合わせて一緒に買い物を楽しむこともできますし、アバターに扮した店員による接客も受けられるのは、特に大きな魅力でしょう。

②広告、PRイベント

Fortnite(フォートナイト)やRoblox(Roblox)など、数億人を超えるユーザーを世界中にかかえる巨大ゲームメタバース空間を中心に、各企業の広告出稿先やキャンペーン先、アイテムの販売先としての活用が増えています。

いずれのプラットフォームもユーザーの多くはα世代やZ世代といった若年層。これからの購買を担っていく世代へ効率的にリーチしてエンゲージメントを構築する上でも、今後さらに重要になる手法と考えられます。

③ファンイベント

メタバースは、アーティストやキャラクターとそのファンとの交流イベントにも相性ぴったりです。

距離にとらわれずに参加ができ、アバターで同じ会場にいる参加者同士での一体感が楽しめます。

ECとの連携により、並ぶことなくスムーズグッズ購入ができるのも魅力の一つです。

他にも開催側のコストが抑えられる、バーチャルならでは演出ができるなど、リアル開催とは違ったいくつものメリットがあります。

④観光

メタバースはオンライン環境が整っていれば、誰でも好きな場所からアクセスができ、イベント・交流・購買活動ができるので、旅行や観光コンテンツとも相性が良いとされています。

非接触でありながらも実在感があるため、行くことが難しい場所や景色を現実よりも自由に体験でき、高齢者や体の自由がきかない方でも、気軽に観光体験をすることが可能となります。

実際の旅行の前にメタバース内で旅行先を疑似体験をすることで事前学習になったり、逆に旅行後にメタバース内で訪問することによって旅を回顧するなどの楽しみ方もできます。

⑤教育

教育分野へのメタバースの活用は、遠方の先生・生徒とコミュニケーションが取れたり、能動的な体験学習ができたり、実世界では体験できないことも学べるという点で有効です。

例えば教室の代わりにメタバースを活用すれば、生徒がよりアクティブに参加できる授業が可能ですし、企業研修においても、現実では研修ができない危険な行為について学ぶ際にメタバースやVRの利用価値があります。

⑥不動産

(「The Sandbox」INTRO)

メタバースを実際の土地のように売り買いする不動産業も始まっています。

リアルの不動産においては、土地に価値があれば必然的に売買の対象になるわけですが、メタバースにおいても集客力や希少性の高いメタバースが不動産として価値が高まり、取引されています。

メタバース上での不動産事業としては、土地を売買して売却益を得る、土地を貸し出して賃貸料を得る、所有している不動産における店舗運営やイベント開催などの事業内容が考えられます。

実際に、イタリアの高級ブランド「GUCCI」がメタバースプラットフォーム「The Sandbox」に土地を購入した例などもあります。

ただ、メタバース不動産の価値はアップダウンが激しく、現実の土地以上に不確定ですので、リスクを知った上で慎重に取り組む必要があるでしょう。

⑦医療

医師がロボットを通じて遠隔で患者を診察するなど、メタバースで医療サービスを提供する試みが始まっています。医療分野では少子高齢化の影響を受けて、過疎地域における医療機関不足や、通院が困難な高齢者のケアなどが課題となっています。

このように医療にアクセスしにくい住民に対して、メタバースを活用して遠隔医療を提供できるようになれば、地域医療の問題を解決できる可能性があるでしょう。

⑧バーチャルオフィス

今まで対面で行っていた業務上のコミュニケーションをメタバース空間で行うバーチャルオフィスサービスは、コロナ禍をきっかけに一気に拡大しました。オンライン上なのでインターネット環境があればいつでもどこからでも参加できる点、アバターとして参加するため実在感を感じられることで意思疎通がしやすくなり、コミュニケーションの活性化が図れる点がメリットです。

メタバース空間にあるホワイトボードを使ったり、3DCGオブジェクトを共有しながらコミュニケーションを進められるところもメタバース空間ならではの特徴です。

6.メタバースの普及で生まれるビジネスモデル

①デジタルコンテンツ・サービスの販売

(cluster【公式PV】OPEN YOUR WORLD)

現時点で最も多くの企業がマネタイズに成功しているビジネスモデルが、デジタルコンテンツやサービスの販売です。メタバース上でのユーザーのゲームなどのサービスの利用料や利用する武器・アバターなどのデジタルコンテンツへの課金からマネタイズします。

従来からゲームなどのサービスへの課金市場は一定の規模で存在しましたが、メタバースの普及によりデジタルコンテンツの市場がより拡大していくと考えられています。メタバースではアバターを用いてコミュニケーションをしたりゲームをしたりするため、アバターの衣装やゲームで使うアイテムなどのデジタルアセットの販売は大きなビジネスとなります。

このビジネスモデルの事例として、世界を代表するゲーム型メタバースであるフォートナイトや国内最大のSNS型メタバースであるCluster、個人でもマネタイズができるゲームとして有名なAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)というゲームなどが挙げられます。

②インフラやツールの企画・制作・運営

(newtrace制作「志摩スペイン村 Running of the Bulls」 on Roblox)

メタバースをビジネス活用する上で必要となるインフラやツールの企画・制作・運営を行うビジネスモデルです。

メタバースに進出する企業などに対し、メタバースを構築するインフラやコンテンツを作成するツール、また企画そのものを提供し、その制作費や利用料、コンサル費によってマネタイズするモデルです。

 

メタバースに進出している企業は増えているものの、ゼロからメタバース空間を構築したりコンテンツを制作するには様々な知識や技術、また人員が必要となるため、それらの知見のある企業に依頼するのが一般的です。

 

このビジネスモデルの事例として、代表的な3DゲームエンジンであるUnityやバーチャルマーケットを運営するHIKKYが提供するVketCloud、Robloxでのワールド制作に長けるnewtrace社などが挙げられます。

 

▼関連リンク:メタバース制作・開発の流れや必要スキルについて解説!(サイト内リンク)

メタバースはどうやって作る?制作・開発の流れや必要スキル、おすすめ制作会社を紹介

③プラットフォーム手数料

(Roblox Official Trailer)

メタバースプラットフォームの手数料を徴収するビジネスモデルです。現実世界にも動画コンテンツサイトの利用手数料など、プラットフォームのユーザーに手数料を徴収することで収益を得るビジネスモデルがあるように、メタバースを運営するプラットフォーマーが、メタバース上での価値交換を仲介しその手数料によりマネタイズします。 

このビジネスモデルの事例として、没入型ソーシャルプラットフォーム「Roblox」があります。Robloxは一般ユーザーによって制作された5000万本を超えるゲームタイトルから成り立っています。一部課金制となっており、このユーザーからの課金によってマネタイズされています。

④マーケティングや販売への活用

マーケティングツールや集客チャネルとしてのビジネスモデルです。開発中の商品のテストをメタバース上で実施することでデータ収集の効率化が図れ、実施コストの削減が期待できます。またメタバース上で販売を行えば既存の集客では接触できなかった層との接点の創出や、ブランド価値向上に繋がります。

またメタバース上で販売することで3Dの没入感のあるコンテンツやアバターでの接客による成約率の向上も期待できます。

⑤広告枠販売

メタバースの区画を所有している企業や個人がメタバース内の広告枠を出稿希望社に販売することでマネタイズするモデルです。

広告と体験を結び付けた宣伝方法は効果が高いため、メタバースというユーザーの主体的な体験行動の中で遭遇する広告効果は高いと言えます。

テレビなどの4大マスメディアやWEBが広告出稿先として一般的になったように、メディアとしてのメタバースに人々の注目が集まることになれば、その広告価値もまた上がっていくでしょう。広告の効果を上げるためには、ユーザー数の多いRobloxやThe Sandboxなどのような大型プラットフォームを使うことが大事です。

⑥各種業務効率化への活用

エンドユーザー(toC)ではなく、導入した企業の社内製造ラインや製品のシミュレーション、また遠隔地からの業務の実現、研修の実施など生産性向上のためのモデルです。

新製品のシミュレーションをメタバースで行えば、実際にかかる材料費や準備にかかる時間を削減することができます。

7.メタバース市場拡大に向けた今後の課題

ここまで、メタバースの市場規模や注目された背景、これから発展が見込まれる理由、活用分野について解説してきました。

メタバースが人々の新しい生活様式にフィットしていることや各国の取り組み、また様々な分野での活用実績からも、今後も非常に伸びしろのある市場であることがわかります。

しかし、メタバース市場は前述したようにまだ黎明期であり、課題も多く残されています。

①デバイス性能やインターフェイスの改善と低価格化

メタバースイメージ

メタバースに参加するためのデバイスの性能や使いやすさがまだ不十分だという点が課題の1つとして挙げられます。

メタバースでより没入感を得るために使用されるヘッドマウントディスプレイは、現状の製品は大型で重いものが多く、長時間利用していると疲れてしまうという欠点があります。

また、人によってはヘッドマウントディスプレイの装着により頭痛やめまい、吐き気などを引き起こす「VR酔い」になってしまうこともあります。より多くの人々に受け入れられるデバイスの開発が急がれています。

 

また、ヘッドマウントディスプレイに関しては低価格化も普及のカギとなります。

スマホ装着タイプは数千円と比較的安価に購入できるものが主流ですが、PC接続タイプやスタンドアローンタイプで一定の没入感を得られるスペックだと、安くても3万円程度し、高価なものは10万~20万円台と気軽に使い始められる価格ではありません。

 

メタバースを一般に普及させ、市場を拡大するには、デバイス性能の改善と共に低価格化が求められています。

②仕様の標準化

現状、メタバースには標準規格のようなものはありません。

それぞれのプラットフォームは独立して運営され、ルールやそこで用いられるアバターや仮想通貨も異なります。

この状況は、メタバースの普及にあたって1つのハードルと言われています。

なぜなら、ユーザーが複数のメタバースに参加しようとすれば、プラットフォームごとに仮想通貨やアバターを用意して使い分ける必要があるからです。

そこで、メタバースの標準化と相互の運用性を確立すべく、まずアバターに関しては、3Dアバターの標準規格としてVRMというプラットフォームに依存しない規格があり、あらゆるプラットフォームでの普及を目指しています。

メタバース自体の標準化に関しては2022年6月、オープン メタバースの相互運用性標準の開発を促進する団体として、「The Metaverse Standards Forum」が発足しました。

メタバースの標準化を目指して各企業が協力する場を提供する、としており、Microsoft、Adobe、Meta、Intel、SONYなど多くの企業が参加しています。

メタバースとアバターの標準化が実現すれば、ユーザーはあらゆるメタバース空間をシームレスに行き来できるようになり、利用者はさらに増えることが予想されます。

③マネタイズ

現状、メタバースでのビジネスはまだマネタイズが難しいことも課題として挙げられます。

 

社名そのものを変更したMeta社(旧Facebook社)を筆頭に、あらゆる産業のリーディングカンパニーがメタバースの活用に向けて積極的な投資を行っているのは事実です。

背景としては、前述したようにメタバースが持続可能な社会の形成に大きな役割を果たすと考えられており、日本を始めとした多くの国がメタバースの普及を推し進めようとしていること、それと呼応するように民間でも人々の生活の向上や企業の収益アップに繋がる活用が考えようとしているからです。

 

ですが、現在のメタバース技術はまだ黎明期のステータスにあり、ユーザーも多いとはまだ言えず、現時点で大きな収益化に結びつけられている企業も多くないのが実情です。

 

企業が中長期的な収益獲得に繋がるビジネスモデルやエコシステムの確立に成功すれば、各企業のメタバースへの投資が増え、市場全体の発展に大きく貢献すると考えられます。

 

参入を考えている企業は、メタバース施策のみでの短期的あるいは直接的なマネタイズに期待するのではなく、その投資分に見合うよう、事業をどのタイミングでどのようにマネタイズするか事業全体を俯瞰して検討する必要があるでしょう。

そもそもメタバースの参入目的を売上アップではなくブランディングに定め、KPIも収益ではなく来場者数や滞在時間、クリック数などに定めている企業も多くあります。

④人材の確保

メタバースは、様々な専門知識が必要とされますが、まだ新しい領域であることから専門性の高い人材や経験値のある人材が不足しているという課題もあります。

さらにビジネスという目線で考えると、メタバースを利活用したビジネスを企画・運用できる人材も圧倒的に足りません。

前述した通り、マネタイズの方法も確立されていないことから、そもそも自社のビジネス課題をメタバースによってどのように解決できるのか、どのようなメタバース活用が自社にとって有益であるのかを見極められる人材もまだ少ないのです。

これらの人材をどのように確保するか、または育成するかは、メタバース事業に参入する企業にとって大きな課題になるでしょう。

 

▼関連リンク:メタバースを開発しビジネス活用するための知識やスキルを詳しくご紹介!(サイト内リンク)

メタバースはどうやって作る?制作・開発の流れや必要スキル、おすすめ制作会社を紹介

⑤メタバースやNFTに関する法整備(プライバシーとセキュリティのリスク)

メタバースやNFTにおける法整備が不十分であることは大きな課題です。

現在の法律は、現実世界でのビジネスを前提として作られたもので、バーチャル空間での適用を想定していないからです。

 

商取引に関する法律と、著作権や個人情報を保護する法律、ハラスメント防止・対処法の整備は特に急ぐ必要があると言えるでしょう。

 

例えば、メタバース内で購入した美術品などのNFTアイテムが、技術的な問題で消えてしまった場合、メタバース運営側に対して法的に補償を求めることは困難です。

また、メタバース内に制作するワールドやアバター、アイテムについての著作権や意匠権などはどこに帰属するのか、個人情報はどう取り扱うのかなども明確にする必要があります。

 

さらに、ユーザー間での嫌がらせや誹謗中傷などハラスメント行為への対応を厳密に定めているか否かもメタバースによってさまざまです。

 

既存のメタバースプラットフォーム内でメタバースを構築する際は、あらゆるリスクヘッジができている安全な環境なのか、規約を確認してから利用すると良いでしょう。

自社でゼロからメタバースを構築する際は、現実世界の法律を参照しながらバーチャル空間での利用を想定した規約を作る必要があります。

 

政府でも法整備に乗り出していますので、メタバースを利用する企業は最新情報をチェックしましょう。

 

▼関連リンク:若者に人気のメタバース「Roblox」の危険性や運営側の対策を解説!(サイト内リンク)

若者に大人気のメタバース!「Roblox」(ロブロックス)は危険なの?運営側の対策は?

まとめ

メタバース市場について解説しました。

メタバースの世界市場は2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想され、メディアやエンターテインメントだけではなく、教育、小売りなど様々な領域での活用が期待されています。日本政府が掲げるムーンショット目標に組み込まれているほか、世界各国や業界のリーディングカンパニーがメタバース事業を推進していることも市場拡大を後押ししています。

一方、メタバース普及の課題としては、法整備や仕様の標準化、人材の確保、デバイス等技術面の向上と低価格化が挙げられます。ビジネス活用にあたってはそれらの課題を解消してメタバースユーザーを増やすことが、マネタイズの大きなカギを握っていると言えるでしょう。

短期的なマネタイズよりもブランディングや先行投資として大きな価値があるメタバース。スモールステップから導入を検討してみてはいかがでしょうか?

▼関連リンク:日本企業がメタバースに取り組む意味を徹底解説!(サイト内リンク)

日本企業がメタバースに取り組む意味は?日本のメタバース事例とメタバース制作会社やプラットフォームを紹介

 

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