大きな木

2017.06.12

東京は渋谷区 道玄坂、その坂を上りきる道玄坂上の手前にある古いオフィスビルのなかに私たちの会社はある。

そこから見える大きな木は、

その昔渋谷が、のどかな田園であったことを私たちに伝えているかのように枝葉を伸ばす。

今後さらに変わりゆく渋谷の街並みを、この木は何を思って見つめているのだろうか。

自分がいつか切り倒されるそんな不安や切なさも感じているのだろうか。

自分はいつまでこの渋谷の街を見つづけることができるのだろうか…と。

私たちの仕事は変わりゆく風景や、今はないそのシーンを一足先に、誰にでも分かりやすく伝えること。

この一歩先が見えているのは設計家ら専門家だけでも事足りるのかもしれない。

けれども私たちはこれからつくられようとする一歩先の未来の姿を目にするとき、

一人ひとりの感性は更なる価値を生み出し、そのまた先の未来を創る。

梅雨に入り今まさに青々と葉を広げ、今この時、この瞬間の光を生きる力に変えていく大きな木。

いくつもの時代、何十年もの時間を超えてきた大きな木も、

思えばそうしてその時々の日の光を力に変えて、

その瞬間、瞬間を生き、次の枝葉を伸ばすことを繰り返してきたに過ぎないのだろう。

まさに生命力のこの季節。変貌を形にする私たちのこの仕事。

いつの日か私たちの描くパースにこの“樹木爺さん”は描かれているのだろうか。

たとえ切り倒され、そこにこの木は無くっても、それでも木はうれしいと微笑んでいるのかもしれない。

パースに描かれるのは、いつも人々の一歩先の生活を見せる伸張の未来だから…なのじゃ。