【新しいデジタルマーケ】「ロブロックス」に志摩スペイン村を作ったら、大きな反響があった話
2023.04.11
コロナ禍を経て、顧客とのコミュニケーションもオンラインのやりとりが普及しました。非接触コミュニケーションツールが次々とリリースされましたが、ビジネスユースとして注目度が高まっているのが「メタバース」。中でもデジタルマーケティングにメタバースを活用する企業が増えている模様です。
では、メタバースとはそもそも何なのでしょうか?実際にメタバースマーケティングはどのように実施するのでしょう?気になる効果は?
この記事では、今非常に注目されているゲーミングプラットフォーム「Roblox」における企業活用事例を挙げながら、企画・開発から成果までを考察します!
▼目次
2.【メタバースマーケティング事例】オープン3ヶ月で訪問数3万超え!海外からのアクセスも多数の「メタバース×志摩スペイン村」、その中身と成果とは?
1)【知っておきたい】注目のメタバース!Roblox(ロブロックス)とは?
3)なぜ「志摩スペイン村」をメタバースに? 背景には地方ならではの課題が
4)“メタバース版”志摩スペイン村 「志摩スペイン村 ~Parque Espana~」の仕組み
2)リアルな再現への評価!メタバースから現実世界への“波及効果”も
4.「“メタバース版” 志摩スペイン村」が顧客にもたらした価値とは?
1.「メタバース」とは?
1)コロナを機に急速に拡大!
「メタバース」とは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間の中にユーザーが「アバター」と呼ばれる分身で参加し、コミュニケーションを図りながら経済活動や生活を送ることを想定した空間およびサービスのことです。
日本で代表的なプラットフォームとして、ゲーム要素の強い「Fortnite(フォートナイト)」、生活を楽しみながらアバターを着飾るなど現実と同じように自己表現ができる「あつまれどうぶつの森」、イベント開催や人気アーティストのコラボも話題の「Cluster(クラスター)」などがあります。いずれもSNSの要素が強くコミュニケーションの場としても用いられ、コロナ禍を機に非接触コミュニケーションの場として大きく伸びているサービスです。
同時にVR機器の普及やNFTのような関連技術の実用化が進んだことも、メタバースの拡大を後押ししました。
ブレイクのきっかけはパンデミックでしたが、上記のような技術革新に加えてデジタルネイティブ世代が消費の中心に入って来たことも重なり、単なるムーブメントではなく生活様式としてこれからの時代のスタンダードになりつつあるのです。
2)メタバースの特長
メタバースは主に三つのメリットによってこれまで以上の体験・演出が実現できると言われています。
①アバターを通じて実際に対話しているような感覚になれるため、従来にない没入感や体験が得られる。
②メタバースはアバターや背景が3DCGによって作成されるので、現実では不可能な演出や圧倒的な情報量を比較的低コストで実現できる。
③メタバースはインターネット環境で展開されることから、時間と距離の制約がかからない。
つまりメタバースを用いれば、距離や移動手段、費用などの問題で諦めていた施策が、リアル以上の体験を伴って実現できるかもしれない、ということになるのです。
3)メタバースと相性の良いビジネス活用法
ビジネスの場面でメタバースのメリットが活きる分野としては以下が挙げられます。
①社内コミュニケーション(バーチャルオフィス・社員研修・教育・社内イベントなど)
②シミュレーション(機械の操作方法や場面の再現など)
③メタバースそのものの売買
④マーケティング(EC・バーチャルイベントなど顧客とのコミュニケーション)
社内・社外問わず、コミュニケーションが発生する様々なシーンでメタバースがリアルとの代替、あるいは両立する形で成り立ちます。
マーケティングの視点でメタバースの実例を取り上げる本記事では①~③についての詳細な説明は他記事に譲り、④「マーケティング」に関して掘り下げていきたいと思います。
2.【メタバースマーケティング事例】オープン3ヶ月で訪問数3万超え!海外からのアクセスも多数の「メタバース×志摩スペイン村」、その中身と成果とは?
ここからは、メタバースとしても人気上昇中のゲーミングプラットフォーム「Roblox」に顧客とのコミュニケーションの場を構築してマーケティング効果を上げた例を、本記事を執筆しているnewtrace社で企画制作を行った志摩スペイン村の実例を取り上げながら解説します。
1)【知っておきたい】注目のメタバース!Roblox(ロブロックス)とは?
Robloxはプレイヤー自身がゲームを制作したり、他のプレイヤーが作ったゲームで遊べたりするゲーミングプラットフォームです。2006年にサービスを開始後、コロナを機に欧米やアジアを中心に世界的な人気を博し、Roblox社発表によると2022年のDAU(1日あたりのプレイ人数)は5,880万人にという驚異的な数字を誇ります。
主なユーザー層は17~24歳以下の所謂「Z世代・α世代」と呼ばれる若者であり、彼らをターゲットとして近年ではGucci、Nike、ウォルマートなどの有名企業が続々と進出しマーケティング活動を行っています。
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2)なぜRobloxを選んだのか?
既に認知度が高く日本企業の進出実績のあるメタバースが日本にはいくつもある中、弊社が今回「Roblox」をメタバースプラットフォームに選んだ理由は以下の4点です。
①効率的に集客可能であり、オープン後も“ゴーストタウン化”しにくい
メタバースを自社独自で制作すると、集客もゼロから行う必要があります。海外へリーチさせようと思うと手間もコストもさらにかさむでしょう。 Robloxは月間で2億2千人以上がプレイし、メタバースプラットフォームとしては世界最大級のユーザー数。もともとそこに多くの人がいる状態なので、集客も容易に行うことが出来ます。
同時にメタバースの課題の一つともなっている、「ゴーストタウン(時間の経過に伴って人がいなくなる状態)化」の心配も減らせます。
②日本市場における将来性
2022年12月、Roblox社は日本における事業活動を拡大することを発表しました。同社によると、日本は主要市場の中で1日あたりのアクティブユーザー数が最も急速に拡大している市場であり、過去4年間の日本のユーザーコミュニティの成長率は1935%となっているとのこと。2023年からは積極的に日本市場への働きかけを行い、日本のユーザー数がますます増えることが予想されます。
日本企業進出例が少ない今、Robloxを舞台にデジタルマーケティングを行うことが、話題性としても先見性としても非常に魅力的であることは間違いありません。
③長期的な顧客育成に適したエンゲージメント
Robloxユーザーの特徴として「滞在時間の長さ」と「利用年数の長さ」があります。
Robloxはゲーミングプラットフォーム・メタバース・SNSといくつもの要素を兼ね備えているため、利用者の1日の平均プレイ時間は2.8時間で、同じようにティーンに人気のSNSアプリ、スナップチャットの滞在時間(90分)の3倍以上という統計が出ています。
また、ユーザーの割合を13~17歳と17~24歳で比較すると、プレイヤーが年を重ねてもRobloxを辞めずに使い続けているため後者の割合が年々増えているとRoblox社が発表しています。 若年層にブランド認知させ育成する下地がRobloxには整っていると言えます。
④サーバー費不要
Robloxのサーバー上にワールドを作るため、メタバース開発の大きなランニングコストとなるサーバー費用は不要です。そのぶん、企画やコンテンツ内容にコストをかけることができ、リッチな空間を作ることも可能です。
⑤ユーザーの安全面への配慮
オンラインゲームやSNSと同様、メタバースにおいてもいじめや誹謗中傷、課金トラブル、ハラスメント行為などが大きな問題となっています。
Robloxは違反・犯罪行為の防止意識が非常に高く、子供のアカウントを保護者側で設定・管理できるペアレンタルコントロール機能を始めとした様々な対策をとっています。ユーザーの安全が確保できるという意味で、メタバース制作を考える企業にとって安心してメタバースを構築できるプラットフォームといえます。
▶詳しくはこちらの記事もチェック!
・企業がデジタルマーケティング手段に「Roblox」(ロブロックス)を選ぶ理由
・若者に大人気のメタバース!「Roblox」(ロブロックス)は危険なの?運営側の対策は?
3)なぜ「志摩スペイン村」をメタバースに? 背景には地方ならではの課題が
「志摩スペイン村」は、三重県志摩市にある、スペインの街並みを再現した複合リゾート施設です。1994年開業で、テーマパーク「パルケエスパーニャ」を中心に、ホテルや温泉を擁しています。異国情緒あふれる街並みやバラエティ豊かなアトラクション、グルメ、エンターテイメントなど豊富なコンテンツが魅力です。
▶公式サイト https://www.parque-net.com/
今回のメタバース施策の背景には地方ならではの悩みがありました。過疎や経済力の縮小、若者の流出は昨今の大きな社会課題ですが、「志摩スペイン村」のある三重県も同じ状況だったのです。
この課題に対し、「志摩スペイン村」×「Roblox(メタバース)」という親しみやすいオンラインコンテンツを通して日本のみならず世界中のZ世代・α世代の認知を高め、志摩スペイン村のある三重や関西に足を運んでもらえるきっかけになれば、ということから志摩スペイン村×メタバース企画の実施が決まりました。
4)“メタバース版”志摩スペイン村 「志摩スペイン村 ~Parque España~」の仕組み
「志摩スペイン村 ~Parque España~」は、「志摩スペイン村」のテーマパーク「パルケエスパーニャ」のエントランス・エスパーニャ通り・シベレス広場・マヨール広場までを、実際の設計図や現地写真、また3Dスキャンデータに弊社の建築CG技術を掛け合わせて「Roblox」内に本物そっくりに再現したメタバースです。
Robloxに利用登録をすれば誰でも無料で入場できます。
プレイヤーはアバターでワールド内を自由に歩き回りながら施設のガイドを読んだり、建造物にまつわる知識を深めることができます。

実際の志摩スペイン村の人気キャラクターもいたるところに登場し、全てのキャラクターを巡るスタンプラリーも楽しめます。
他にも、ワールド内に点在するコインを一定数集めると、集めた数に応じてアイテムが入手出来たり、

スペインの奇祭「トマト祭り」「牛追い祭り」をモチーフにした生き残りゲームに挑戦することもできます。

ゲームの生き残り時間で上位に入ると「志摩スペイン村ペアパスポート」が当たるキャンペーンを実施しました。(現在は終了)

アイテム集めやゲームだけでなく、ただ友達とチャットでおしゃべりしながらまったりする過ごし方も「メタバース」ならでは。
なお、BGMは志摩スペイン村で実際に流れているテーマソング「きっとパルケエスパーニャ」を使用していますので、臨場感たっぷりです。
▶実際に「志摩スペイン村 ~Parque España~」で遊んでみよう!
(本メディア内の別記事へリンクします)
3.「“メタバース版” 志摩スペイン村」の成果は?
①世界中から多数来場!半数以上が海外から
Robloxでは、開発者向け解析サービスやアナリティクスとの連携でDAUを含む来訪数、来訪者の使用デバイス、居住地、年齢層、ワールド内に設けたトリガーポイント(本ワールドの場合はキャラクターや建造物のクリックポイント等)のアクションなど来訪者の履歴が取得できます。
「志摩スペイン村 ~Parque España~」はオープンから3ヶ月で延べ3万を超える訪問があり、その半数以上が諸外国からのアクセスでした。主なアクセス元は日本、アメリカ合衆国、フランス、イギリス、ポーランド、インド等、多くの国と地域からの来訪が確認できました。ユーザーが世界中にいるRobloxならではの結果と考えられます。

また、トリガーポイントにおけるアクション数は合計4742回でした。これはワールド内の建造物やキャラクターの説明が4742回読まれたことを示しています。来訪数に対する比率としても、かなりの関心度の高さが伺えました。
新型コロナウイルス対策による入国制限が緩和され、インバウンド需要が増加傾向にある中、諸外国への志摩スペイン村のアピールに繋がりました。
②リアルな再現への評価!メタバースから現実世界への“波及効果”も
本ワールド来訪者のTwitterでのつぶやきを見てみると、
「すごくリアルに作り込まれていて驚いた」
「キャラクターに会えた!そのまんまだった!」
といった再現性の高さやキャラクターモデリングのクオリティへの評価、
「幼い頃家族で志摩スペイン村へ行った思い出が蘇った」
のように現地での記憶を呼び起こされている様子、
「これで世界のどこからでも志摩スペイン村に行ける」
といった声がありました。
他にも来訪者の行動として、自分のアバターに志摩スペイン村で人気の「チュロス」を持たせたり、キャラクターと記念撮影風のスクリーンショットを添えた呟きも見られ、実際の志摩スペイン村と同じような楽しみ方をしている様子が確認できました。
また、プレイ動画をYouTubeに公開する来訪者も見られました。
4.“メタバース版”志摩スペイン村が顧客にもたらした価値とは?
1)Z世代・α世代へのブランディング
日本に普及しつつある他のメタバースは、リテラシーを含めた完成度の高さが魅力ともいわれ、マーケティングプラットフォームとしての価値観も既存の広告の延長線上にある、いわば「現役のオトナ向け」に作られてた成熟したメタバースです。
一方Robloxは「未来のオトナ」がメインユーザー。ゲームの未完成さ、例えば普通のゲームだと必ず修正されるようなバグのようなものも含めて許容できる素地のある世代、つまりZ世代・α世代に見られる本当の意味でのデジタルネイティブがターゲットとなってきます。
物心がついたころからインターネットが身近にあって、日常的なやりとりもメールや電話ではなくSNSで交流するZ世代やα世代は、そもそも現実世界とインターネットとの境目が曖昧です。メタバースとの向き合い方も、「ゲーム攻略(=目的志向)」というよりも、「そこで過ごす」という感覚。放課後に公園やカフェで集まるのと同じようにメタバースに集合するような彼らにとっては“メタバース版”志摩スペイン村も「Robloxで見つけた面白い遊び場」なのです。
現実と同じようにそこで友達を増やしたり、誘い合って一緒に遊びに行きチャットで会話を楽しむ。時には見つかるバグを面白がり、アップデートに興奮する。それらの体験を各自のSNSで発信・共有・拡散していく…それらを本ワールドを舞台に繰り返していくことが、彼らにとっては志摩スペイン村とのエンゲージメントを高める有効なブランド体験となっていくと考えられます。
2)デジタルツインによる“疑似体験”
前述の通り、“メタバース版”志摩スペイン村は実物をCGで忠実に再現したことにより、本物の志摩スペイン村を歩いているかのような感覚を来訪者に与えています。 過去に志摩スペイン村へ遊びに行ったことのあるプレイヤーは当時の経験を思い出し、まだ行ったことのないプレイヤーは以前より志摩スペイン村に親しみを感じているような反応をTwitter上で見ることができました。


また、海外からの来訪者にとっては、ワールド内で日本語※がわからなくても3D空間で直観的に志摩スペイン村の雰囲気を感じ取ることができ、訪日インバウンドにも繋がります。 志摩スペイン村への興味関心が高まり、現地体験がもっと楽しくなると素晴らしいですね。 ※一部英語の翻訳はあります。
3)志摩スペイン村の理解促進
来訪者がワールド内の建造物やキャラクターの説明を読んだことを示す「クリック数」は前述の通りで、志摩スペイン村をより深く知るきっかけの一つと捉えられます。
ワールド内に設けられたゲームの「単純だが中毒性のある作り」がフックとなって、一度来たプレイヤーが繰り返し訪れていることもまた、志摩スペイン村の理解促進に繋がっていると考えられるでしょう。
5.まとめ
Robloxでの例を通じて、メタバースが地方創生や訪日インバウンドといった社会課題や、企業マーケティングにもたらす可能性が見えました。 コンテンツマーケティングとしても、新たな選択肢になるのではないでしょうか。
弊社newtraceではRobloxでのメタバース制作を承っております。
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